R130Sfのレデューサを自作する

はじめに

ビクセンのR130Sfのレデューサを自作しようと思ったきっかけなのですが、実を言いますと本当はR200SS鏡筒が欲しかったのですが、 いろいろ揃えると結構な金額になってしまうため、とりあえず断念しました。

そこで手持ちのR130Sfの画像が小さくなってもよい(いやもう少し小さくしたい)ので、もう少し明るい望遠鏡にできないものかとレデューサがないか調べたところ無さそうでした。 しかし自作している記事をいくつか見つけましたので自作してみることにしました。 ただし問題がありまして、自作記事はキャノンのカメラ用ばかりでニコン用は見つかりませんでした。 仕方ないので、とりあえずキャノン用として紹介されているレンズを購入して【何とかならないか】とやってみたところ、無理でした。 理由はレンズのサイズがニコンのTリングのサイズより大きいためでした。 そこで今度はニコンのFマウント用Tリングとくっつきそうな大きさのレンズを探したところ、ありました。 レンズの性能的には高級とは言えないかもしれませんが、なんとかくっつきそうです。

レンズの焦点距離はとりあえずキャノン用と同じで試してみたところ、 比較的近距離の物にはピントを合わせることができたのですが遠くのものにはピントを合わせることができませんでした。

これまた仕方ない...おそらくレンズの焦点距離が短すぎるのだろうと考えられたので、もう少し焦点距離の長いレンズを2つ購入してみました。 こちらの2つで試してみたところ、...ダメでした。
「焦点距離が短すぎる」というのが正しくないようで、試してみたところバックフォーカスが短くなってしまって焦点が合わないようでした。

当初考えていたやり方では「焦点が合わない」という結論に達しました。 しかしこのままでは非常に悔しい(結構お金かかった)のでどうにかならないものか...と考えたところ、 「キャノン用のようにTリングにはめ込めるんじゃね」と思い、レンズの枠を取り除いてみたところ、なんとほぼピッタリ収まることが分かりました。 少し隙間が空くのですがコンマ数ミリくらいの隙間なので、手持ちであった厚さ0.5mmくらいの厚紙を半分に割くことが出来たため、これをTリングにはめ込んで接着剤でくっつけてみることにしました。 接着剤はガラスと金属などを接着できるものを用いました。
というわけでして、以下に自作したレデューサの倍率の計算や、使用したパーツなどを紹介します。

なおこの記事を参考にレデューサを自作される方はくれぐれも自己責任において行ってください。
私(管理人)は一切の責任を負えませんのでご了承ください。






目次

(1)購入品と使用するレンズの仕様
(2)合成焦点距離の計算
(3)制作手順
(4)比較的遠くの物を撮影して比較
(5)「プレアデス」と「アンドロメダ」を撮影して比較







(1)購入品と使用するレンズの仕様

今回使用したレンズは、焦点距離が250mmのクローズアップレンズです。
TリングはKenkoのものを使用しました。 たまたまKenkoのTリングを使用したのですが、ビクセンのTリングとイモネジの位置が異なっていてKenkoの方がネジが回しやすい位置に来ました。
接着剤は金属やガラスを接着できるタイプを用いました。
Tリングに付属するイモネジでは調節が面倒なため、私は「つまみネジ」を購入して使用しています。 ちなみに私が使用しているカメラはD7500とD3400ですが、テストにはD7500を用いることにします。

必要なパーツ

  1. MARUMI カメラ用フィルター クローズアップレンズ MC+4 43mm
  2. Kenko 望遠鏡アクセサリー Tマウントアダプター 口径42mm ピッチ0.75 ニコン Fマウント用
  3. ボンド クイック5 15gセット
  4. uxcell つまみネジ アルミニウム・ローレットヘッド ゴールドトーン M2.6x8mm
  5. 厚さ0.25mmくらいの紙、または2つに割ける0.5mmくらいの厚紙など。
    私が用いた厚紙は【コクヨ 板目表紙 A4サイズ】というものです。

以上、すべてアマゾンで購入しました。


あと道具類ですが、

  1. カニ目レンチまたは精密ドライバー(マイナス) ※レンズを外すため
  2. 精密ドライバー(マイナス) ※Tリングのイモネジを外すため
  3. 薄手のゴム手袋(数枚)
  4. 割りばし
  5. セロハンテープ
  6. レンズクリーナー
  7. カッター
  8. はさみ
  9. (接着剤を煉るための)金属やガラス製の「皿」など
  10. 黒マジック(光を反射しない黒系の塗料)

を用意してください。
ゴム手袋はレンズに傷や汚れを付けないように、また接着剤から手を守るために使用します。
「割りばし」を何に使うかと申しますと、カッターで先端を薄く削ってヘラのようにして接着剤を塗布するために使用します。 「割りばし」でなくても代わりに接着剤を塗布できるような道具があれば結構です。
「皿」はボンドを煉る(A剤・B剤を混ぜ合わせる)ためのものなので、廃棄する金属の容器や灰皿のようなものでOKです。



制作する(した)レデューサの完成写真などです。



レデューサ・表1

レデューサ画像



レデューサ・表2

レデューサ画像



レデューサ・裏1

レデューサ画像



レデューサ・裏2

レデューサ画像


完成したレデューサをケースに入れた状態。
(つまみネジは入らないので1つだけにしてあります)。
ケースはTリングが入っていた物だったと思います。

レデューサ画像



今回使用するクローズアップレンズ(の外箱)

レデューサ画像

使用する道具のうち、ちょっと何を使ったら良いか分からなそうなものとして、 薄手のゴム手袋があるかと思います。
私が使用したゴム手袋はコレです。
アマゾンで「ニトリルゴム手袋」(パウダーフリー)で検索すれば同じようなものが出てくると思います。

レデューサ画像




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(2)合成焦点距離の計算

合成焦点距離(f)の計算式は下記のようになるようです。
f = (f1 × f2) ÷ (f1 + f2 - d)

f1 = 望遠鏡の焦点距離
f2 = レデューサ(レンズ)の焦点距離
d = 主鏡からレデューサ(レンズ)までの距離

バックフォーカス(s)の計算式も記述しておきます。 バックフォーカスとはレデューサ(レンズ)から合成焦点位置までの距離のことです。
s = (f2 × (f1 - d)) ÷ (f1 + f2 - d)



では実際に値を入れて計算してみることにしましょう。

f1 = 650 	 ← R130Sf鏡筒の焦点距離
f2 = 250 	 ← レデューサの焦点距離
d  = 585 	 ← 主鏡からレデューサまでの距離(比較的遠くの物にピントを合わせたときの実測値)
※「実測値」はR130Sfをメジャーで私が測った値なので、本当の値と若干異なっているかもしれません。
※無限遠の星にピントを合わせるとdの値はもう少し小さくなると思います。


合成焦点距離 f
	f = (650 × 250) ÷ (650 + 250 - 585) ≒ 515.9mm
		515.9 ÷ 650 ≒ 0.794倍


バックフォーカス s
	s = (250 × (650 - 585)) ÷ (650 + 250 - 585) ≒ 51.6mm

大体の合成焦点距離は以上のようになりました。




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(3)制作手順

制作手順と言っても、やることはレンズを無理やりTリングにくっつけるだけです。
注意点としては作業中、レンズに傷や汚れ等をできるだけ付けないこと、 それとTリングの面とレンズの面を正確に(光軸が狂わないように)合わせることです。

※制作中にレンズに傷や汚れなどができるだけ付かないように、 また接着剤も手に付けない方が良いようなので薄手のゴム手袋を数枚用意しておいた方が良いでしょう。

※作業中にはカッターなどの刃物を扱います。 またレンズはガラス製品ですので割ったり欠けたりすると危険です。 ケガなどをされないように十分ご注意ください。

作業を失敗してしまいますと、失敗した内容によっては修正できなくなってしまうこともありますので、
制作前には下記の手順をよく読んで必ず作業手順をイメージするなどして失敗の無いようにして下さい。

  1. レンズとの隙間を埋めるための厚紙を(必要であれば)半分に割き、適当な大きさにはさみで切って(黒色以外の厚紙のときは)黒マジック等で黒く塗りつぶします。
    このとき厚紙をレンズの周り全体にぐるっと巻けるようであればその程度大きさに切っても良いのですが、 レンズが固定されるように部分的に4箇所止めただけでもOKだと思いますのでそれくらいの大きさに切っても良いと思います。 私は4箇所止めにしました。
  2. Tリングのイモネジ3つを外して内側のアダプターを外します。
  3. Tリングとレンズの隙間を埋める厚紙をTリングにセロハンテープで貼り付けます。 レンズとTリングの面(カメラ側)を正確に合わせるために厚紙の端の位置をTリングの面(カメラ側)と合わせておくのがコツです。

  4. 割りばしの先をカッターで削って薄く平らなヘラを作ります。

  5. 手袋をします。以降、状況に合わせて手袋を外すなり交換するなりしてください。

  6. レンズを枠から外します。カニ目レンチまたは精密ドライバーで外します。
  7. Tリングを平らな机などの上に置き、レンズをTリングにはめ込みます。 このとき、レンズの凹面とTリングの面(カメラ側)が同じ(平行)になるようにしてください。 面がずれてしまうと当然ですが像も歪んだものになってしまいます。 また、このレデューサを取り付けるとピント合わせがかなりギリギリになりますのでカメラ側にレンズをしっかり寄せておかないとピントが合わなくなる可能性があります。

  8. 容器に接着剤のA剤・B剤を適量出して混ぜ合わせます。
  9. 割りばしのヘラを使い、接着剤でTリングの内側(レンズの凸面の方)を接着します。
  10. 容器に残った(不要な)接着剤をふき取るなどして処理します。
  11. くっつくまでしばらく待ちます。

  12. Tリングを反対にしてレンズを上側にします。
  13. 容器に接着剤のA剤・B剤を適量出して混ぜ合わせます。
  14. 割りばしのヘラを使い、接着剤でTリングの外側(レンズの凹面の方)を接着します。
    接着剤の塗りすぎには注意してください。はみ出した場所によってはTリングが回らなくなってしまう可能性もあります。
  15. 容器に残った(不要な)接着剤をふき取るなどして処理します。
  16. くっつくまで(完全に乾くまで)しばらく待ちます。

  17. (接着剤が完全に乾いたら)厚紙がはみ出ているようなときは、はみ出ている部分をカッターで切り取ります。 (レンズを傷つけないように注意してください)。
  18. レンズが汚れてしまったときはクリーニングしてください。
  19. 外したTリングのアダプターをはめ込み、つまみネジで固定して完成です。




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(4)比較的遠くの物を撮影して比較

比較的遠くの物にピントを合わせて撮影した画像です。
とりあえず明るい(日中の)写真であれば普通に見られるかなぁ!?といった感じの仕上がりになりました。



レデューサ有り

画像



レデューサ無し

画像

2つの画像をダウンロードして実寸表示後、物差しを使って左下の方に写っている煙突(?)のような部分の先端の長さA・Bを測って計算しますと、

A = 82mm 	(43インチの液晶モニタで表示させました)
B = 101mm 	(        〃         )

倍率 = A ÷ B = 82 ÷ 101 = 0.812

となり、計算で得た0.794という値に近い数字を得ることができました。




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(5)「プレアデス」と「アンドロメダ」を撮影して比較

自作レデューサを使用したときと使用しなかったときの写真の例です。 プレアデスとアンドロメダを撮影してみました。 画像の大きさと淵の方の星(コマ収差)がどのようになっているかをご覧ください。

撮影機材と条件
  望遠鏡 R130Sf(ビクセン)
  カメラ D7500(ニコン)
  ビクセンap赤道儀でオートガイダー使用
撮影場所
  私の自宅前なので条件は良いとは言えません。
その他
  露出時間を短めにしたかったのでカメラの感度を少し高めにしました。





まずはプレアデスを露出時間違いで4種類です。露出時間はそれぞれ15秒、30秒、45秒、60秒です。

プレアデス1

ISO6400 露出15秒

左側:レデューサなし画像
右側:レデューサあり画像

上側:撮影した生画像
下側:適当に処理した画像

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プレアデス2

ISO6400 露出30秒

左側:レデューサなし画像
右側:レデューサあり画像

上側:撮影した生画像
下側:適当に処理した画像

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プレアデス3

ISO6400 露出45秒

左側:レデューサなし画像
右側:レデューサあり画像

上側:撮影した生画像
下側:適当に処理した画像

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プレアデス4

ISO6400 露出60秒

左側:レデューサなし画像
右側:レデューサあり画像

上側:撮影した生画像
下側:適当に処理した画像

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次にアンドロメダを露出時間違いで3種類です。露出時間はそれぞれ30秒、60秒、90秒です。

アンドロメダ1

ISO6400 露出30秒

左側:レデューサなし画像
右側:レデューサあり画像

上側:撮影した生画像
下側:適当に処理した画像

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アンドロメダ2

ISO6400 露出60秒

左側:レデューサなし画像
右側:レデューサあり画像

上側:撮影した生画像
下側:適当に処理した画像

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アンドロメダ3

ISO6400 露出90秒

左側:レデューサなし画像
右側:レデューサあり画像

上側:撮影した生画像
下側:適当に処理した画像

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写真の出来そのものは置いといて(笑)レデューサなしの画像と比べてレデューサありの画像、 大きな減点となるようなところは無いかと判断します。 また、コマ収差に関しても画像が縮小されるためでしょうか?、少なくなっている感じです。

というわけで、(私はプロではありませんが)充分に使えるレデューサであると判断し、これからどんどん使っていきたいと思います。 ちなみにですがアンドロメダを撮ろうとこのレデューサを付けた状態で探していたとき、 D7500のライブビューで見ていたらボヤッとですがアンドロメダの中心が写しだされたんです。 それを見たときそれだけでも「このレデューサ使えるじゃん!!」って思いました。

ただちょっと気になることがありました。 それはレデューサの性能そのものではなくて、取り扱いの難しさです。 暗いところで作業をしていたときにうっかりレデューサのレンズに触ってしまったことがありました。 構造的な問題ですが、必要以上に注意する必要があります。 「自作してみようかな」と思った方はご注意ください。

そんな訳です。
この記事がどなたかのお役に立ってくれれば嬉しく思います。

(2021年11月記)




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